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著 岡田 暁生

4:種水の用意

卵生メダカ飼育にほとんど必須と言ってよいのが、安定した種水供給だ。もちろん種水水槽を作らず、カルキ抜きもしない水道水をいきなり水槽に入れたりする人もいる。だがこれはあくまでベテランのやることであって、初心者のうちは、どんなものであってもいいから種水を貯めるタンクを作っておいてほしい。

4.1:種水を作る

再三言うが、卵生メダカの水にとって重要なのは「数値」ではない。一番いいのは、状態のいい水草水槽(水草が生き生きと茂り、ビーシュリンプがいくらでも増えるような水)。その捨て水を飼育水として使えば、絶対に問題はおきない。アクアソイルを使い、CO2を添加し、スプライトやリシア(もちろん浮き草として使う)を入れて、パワーフィルターをかけた水槽が用意できれば万全だ。よくピートを入れて水をまっ茶色にしている人がいるが、その必要はまったくない。それよりクヌギやクリの枯葉を数枚放り込んでおくほうがいい。養分が染み出すペースが遅いし、水が茶色になったりしない(ただしこれさえも特に不可欠というわけではない)。そして水質のセンサー代わりにエビや貝(ベタでも可)。これらの「センサー」の調子が悪くなったら、その水は使ってはならない。

ここまで手間をかけられないのなら、衣装ケースに枯葉とウィローモスを入れ、軽くエアレーションしておくだけでもいい。何より大切なのは、安定して澄んだ水を作ることである。エビでも貝でもベタでも、あるいはメダカ一匹でもいい、生き物は絶対に入れておく。

なおベテランになれば水道水を数日エアレーションしただけの種水を使ったり、あるいはいきなり水道水をぶちこんだりもするが、初心者にはあまりすすめられない。

4.2:塩を入れる

飼育水には塩を少々入れる。これは雑菌の繁殖を抑えるのに絶大な効果がある。どんな塩でもいいが、人工海水の元がベストだ。稚魚の餌となるブラインシュリンプを長生きさせることにもなる。塩の量は10リットルに一つまみからティースプーン一杯程度。ごくアバウトで構わないし、塩の濃度が少々変化してもメダカには何の悪影響もない。特にコショウ病になりやすいノソブランキウスの仲間には、塩は必須だ。また水温が上がって水が悪化しやすい夏場も、塩は欠かせない。

なお塩の入れすぎには注意すること。塩はメダカの病気の万能薬だが、最初から塩分の多い水を使うと、病気になった時に塩を加えても効果があまりなかったり、あるいは塩分濃度がメダカの許容範囲を超えてしまって逆に死なせてしまったりする。塩は冬場は必須ではないが、夏になれば塩がないとすぐにコショウが出る。

4.3:古水について

もし状態が非常にいい水槽を換水した時、その捨て水を貯めておくと、大変に重宝する。普通、水槽の状態がいいと水換えの時期を先送りしがちだが、むしろその逆をするように心がけよう。いくら状態がよくても、水換え時期が遅れてしまうと、突如として水槽バランスが崩れるもの。その前に先手を打つという意味でも、よい種水を確保しておくという意味でも、最高の状態に水槽があるときこそ少々の水を換え、それを別のタンクにとっておく。こうした水は良性のバクテリアが繁殖した「生きた水」である。これを種水に少々注いでおく。種水の安定に絶大な効果があること請け合いである。ただし、こうして貯めておく古水は、最高の状態にある水槽からとった水に限る。状態が悪い水槽の捨て水を貯めても何の意味もない。また、ベストの状態の古い水は新しい水に比べて驚くほど安定しているが、こうした「いい古い水」は、あくまで新水への「添加物」以上のものではない。いまだに一部では「卵生メダカは古い水」と信じられているようだが、古い水で育ったメダカは、なかなか産卵しない、他の土地の水に慣れ難い、ちょっとしたことでショック死する等の問題が発生しやすい。

時として、外から導入した魚が、最初は至極調子がよかったにもかかわらず、1週間くらいして頓死してしまう、それもヒレを伸ばしきって極彩色を出した姿で死ぬということがある。これは古水で育てられた魚におきる典型的な現象で、恐らく浸透圧の急激な変化によるエラ等の内出血と思われる。卵生メダカ飼育には、「古い水がいい」という人もいれば、「新しい水に限る」という人もいて、初心者のうちは何かと振り回されがちである。一般論として、アフィオセミオンとシノレビアスの仲間は「古い水」でも「新しい水」でも飼える。それに対してノソブランキウスは、「新しい水」でないとすぐに病気になる。だがベストは「まだ使っていないやや時間のたった水」でもって、定期的に水を換えることだ。上にも述べたが、「古い水でも飼える」からと言って、「古い水の方がいい」というわけではない。

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