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著 岡田 暁生

7:水換えについて

7.1:最初の水換えは慎重に

相変わらず導入時の水換えの話題ばかり繰り返すが、これはあくまで「初心者が外から成魚を導入したケース」である。
自分のスタイルを確立してしまっている人なら、もちろんこんな慎重なやり方をする必要はない。だが、くどいようだが、初心者が一番迷い、失敗し、ますますいじくりまわして事態を悪化させる原因の大半が、この導入時の水換えである。


オーストロレビアス ドラズネンシス CXD 001

既に述べたように、導入後1ヶ月から2ヶ月くらいは出来るだけ水換えはせず、餌を控えめにし、水槽バランスをとるようにする。水が薄く濁ったりしないよう慎重に。まだ魚は賢明に新しい水に慣れようとしているところだ。そこでまた大幅な水換えをしていじると、突然ショック死したりする。最初のうち餌を控えめにするのは、出来るだけ水換えをする必要が生じないようにするためである。導入して2週間くらいたって初めて、最初の水換えをしよう。底のゴミをとって、2センチ程度の足し水するくらいでいい。そして1週間後にまた2センチ。一週間たってまた2センチ。最初の1ヶ月は用心用心。せっかく慣れたと思った魚が、多目の水換えをした途端に死んだりすることがある。こう書けば、アフィオやシノに比べて、なぜノソをフルサイズの成魚で外から導入するのが難しいか分るだろう。つまり大食漢で寿命が短く、おまけに水質変化に敏感なノソは、こんな悠長な導入ペースをしている間に寿命がきて死んでしまうのである。初心者のうちはノソを成魚で導入したりするものではない。卵か幼魚でもらうのが賢明だ。

自分のところで殖えた魚は、外から導入したそれに比べて、破格に丈夫である。新水を好むノソブランキウスの仲間だけは絶対に定期的に新しい水にしてやる必要があるが、アフィオセミオンやシノレビアスは、余程極端に大量の餌をやっていない限り、かなり水換えを引き伸ばせるし、また逆に、一度にかなり大量の水を換えてもいい。水を加えるときもどんどん新水を加えていいし、底のゴミが少々(あくまで「少々」だが)舞っても平気。塩の濃度変化もごくアバウトでいい。ベテランになると、四分の一くらいなら、水道水を直接注いだりすることもある。もちろん初心者にはあまり推奨できないことであるのは言うまでもないが、実はヘタな種水を作ってそれを使うよりは水道水の方がコンディションがよくなったりするのである。もし水道水(あるいは1日溜め置いただけの汲み水)を使って、そちらの方が魚の調子がよくなったとすれば、これは種水があまりよくない証拠でもある。


アフィオセミオン SP ビッターイ

ただし上級種になってくると、たとえ自分のところで殖えた魚で、調子がベストのように見えても、調子にのって無神経なことをすると、間違い無しに手痛いしっぺがえしを食らうことは肝に銘じておくべきだろう。一般種ならF1になればもう日本のメダカ並に丈夫とさえ言えるのに対して、上級種はF3くらいまではまだまだ自分の家の水に完全には慣れていない(=外から導入した魚と同じくらい水質には神経質になるべき)と思っておく方がいい。「水換えをさぼらない!」「急激に水を換えない!」「底水は絶対にかき回さない!」「新水は慎重に加える!」が鉄則だ。

7.2:水換えの一般原則

導入して1ヶ月半すれば、もう魚は慣れたと見ていい。水換えをするときは、まず底のゴミをホースでとる。底には腐敗物質がたまりやすく、底水のまきあげには出来るだけ注意する。底の水はヘドロだと思っておく方がいい。たとえ上澄みが住んでいても、底はヘドロの塊。ほんの少し舞っただけでも、神経質な魚なら一発でエラをやられてしまう。「まず底水から」、これは水換えの鉄則中の鉄則だ。同じく足し水をするときも、サイホン方式にするなど、底の水が舞わないように最新の注意を払う。いきなり水を勢いよく注いで、底の水が舞い上がるようなことは、絶対にしない。これでは何のための水換えか分らない。水を悪化させるために水を換えているようなものである。何度も言うが、水槽の上澄みの水は澄んでいても、底には相当に汚染物質が溜まっているものである。

次に水換えのペースだが、古い水に弱いノソブランキウスの仲間だけは、毎週半分以上換えた方がいい。ノソは水換えにマメな人向きの魚である。シノレビアスやアフィオセミオンはもっと水換えを引き伸ばせる。毎週三分の一ないし2週間に一度三分の一から三分の二くらいが目処である。水換えの時に塩分濃度が変化することにあまり神経質になる必要はない。アフィオセミオンは決して古い水で飼えばいいというものではないが、出来るだけ水のコンディションが一定でしっとり落ち着くような水の換え方をしてやる方がいい。こういう換え方をしているといつの間にか稚魚が増えてくる。ただし(後で述べるように)、スコールが降ってきたようなイメージで、ときどき一気に水を新鮮にしてやるような水換えを挟むのが理想だろう。シノレビアスの仲間は、一般論だが、ブラジルのシンプソニクティスの仲間はやや新鮮に保つように、アルゼンチンやウルグアイのオーストロレビアスの仲間は熟した水の状態を出来るだけ崩さないのがよい。そして、何度も言うが、ノソブランキウスはディスカスのような感覚で。

成魚で導入した場合に問題になるのが、最初のピート(産卵床)の交換である。特にノソブランキウスの場合、これをやった途端に、それまで調子がよかった魚が急に落ちるということがよく起こる。底の雑菌が舞ったせいか、ピートが果たしていたろ過機能が急激に落ちるせいか定かではないが・・。ただし、これまた再三言うが、自分の家で育てた魚については、水換えはごくアバウトで構わない。購入した魚と育てた魚のこうした著しい「落差」が、卵生メダカを不必要に「難しい魚」と思わせる原因かもしれない。万全を期すなら、ピートはもう親が死ぬまでそのままにしておくことだ。卵の有無を確認したい気持ちは分るが、特に初心者のうちはピート交換で親を死なせてしまうケースが非常に多い。
年魚ベテランになるとズボラになってしまって、親が死ぬまでピートはそのままにしておく人が結構いるのだが、これが結果として底水のまきあげ防止になっているのかもしれない。F1になるとピート交換もある程大胆にやってもいいが、これまた上級種になると、F1やF2程度ではまだまだ慎重の上に慎重を期した方がいい。ピート交換については10章で詳しく述べる。


アフィオセミオン ブラアナム バフッサム

あくまで一般論だが、ノソブランキウスは絶対に最低1週間に一度の水換え。シノレビアスの仲間はある程度水換えペースをさぼれる。アフィオセミオンの仲間は、水が熟して状態がよく、餌が少なければ、1ヶ月以上放置しても全然構わない。ただしシノレビアスやアフィオセミオンの仲間も、産卵を狙うなら、定期的に水を新鮮な状態にした方が絶対にいい。水のコンディションがよく、餌が少なければ、水換えを長期間さぼっても「飼える」というだけの話で、「そちらの方がいい」わけではない。

7.3:水の悪化の兆候

卵生メダカに限らず、どんな熱帯魚でもそうだろうが、ベテランは「1週間に一度二分の一」といった「マニュアル換水」はしないもの。勘を頼りに水を換えていく。彼らの「水の悪化の目安」は、およそ次のようなものだ。

  1. 貝があまり繁殖せず、全部水面近くにあがってしまったり、死んだりする。
  2. 魚が落ち着かない、餌食いが悪い、奥に引っ込んだまま出てこない、ヒレの伸びがよくない、呼吸が早い、水槽の上部ばかりをぼんやりと泳ぐ等々。
  3. エアレーションやフィルターの泡がきれいにはじけず、水が粘ったようなかんじがする。
  4. 水草があまり生長せず、ウィローモスにコケが絡んだりする。リシアが短いかけらのまま成長せず、長く伸びてこない。あるいは水草が枯れる(これは論外だが)。
  5. フィルターをいじるなどした際に舞ったゴミが、なかなか落ち着かない。もちろん水が薄く濁るなど、これまた論外である。
  6. なお、水が最高の状態にある目安の一つは、冷凍赤虫の残りや魚の死体がまったくかびないことである。それらが最近によって理想的に分解されていくような水なら最高。ほとんどいじる必要はない。

もう一度復習すると、ベストの水槽では、少々底ゴミが舞ってもすぐに澄んだ状態に戻り、貝がどんどん増え、コケひとつないリシアやウィローモスがのびのびと成長し、魚の死体がまったくカビず、魚がヒレをのばしきっているものである。こうした状態の水槽は、屋外に放置したバケツに枯葉がうずたかくつもり、雨水がたまって、コケ一つ生えず、いつ見ても鏡のように澄んでいる状態に近いように思う。もしこの水の「かんじ」がつかめず、参考にする卵目仲間も近所にいないようなら、例えば庭にバケツを三つほど出して放置してみてはどうだろう?そのうちの一つくらいは、なぜかコケも出ず、「しーん」と澄んだ水の色を保つものがあるだろう。その水のイメージに飼育水を近づけるようにするのがよいと思う。それとぐれぐれもPHやGHを気にしないように!!ありていに言えば、初心者ほどこういうことばかりを気にし、水をいじくりまわし、ますます悪循環に陥っていく。もちろん自分の家の水が硬水か軟水かくらいは把握しておく方がいい。だが日本のメダカが日本の水道水なら全国各地どこの水を使ったって増やせるのと同じように、卵生メダカも(ワイルド種ならともかく)日本のどこの水でも「絶対に」飼える。PHやGHを気にしているヒマがあれば、里山に行って、田んぼのきれいな用水路でもしばらく眺めて、自分の家の水槽がそういう水の色になっているかどうか確かめる方がいい。薬品やピート等を使って水質調整をするなど論外、いや愚の骨頂である。

7.4:フィルターの有無について


 もちろんフィルターはあればよいに決っている。投げ込み式でもスポンジ(小型水槽ではスドーのミニフィルターが重宝する)でもいいが、泡は1秒に数回程度に抑えるのがいい。慎重を期して二つフィルターをつけている愛好家もいる。ただし、逆説的になるが、初心者のうちはまず止水にトライした方が、水のバランスを保つ感覚(=水の自浄作用を保つ感覚)を養ううえでいいように思う。実際、しっかり機能していないフィルターをつけても、水をいたずらに撹乱するだけで、むしろ逆効果のことがある。やや誇張して言えば、フィルターは止水でも十分に飼育が出来る人が、さらに万全の水質保全のために利用するものだと言えばよいだろうか。ただし大食漢ですぐに水を汚すノソブランキウスの仲間、水質悪化に敏感な上級シノレビアス(ギゾルフィやウルグアイ系のオーストロレビアス)や
上級アフィオセミオン(セレスティやカメロネンセなど)には、フィルターは必須であろう。特に夏場は、フィルターがあるとないとでは、雲泥の差がある。だが、少々きつい言い方かもしれないが、止水でメダカがある程度飼えない人は、フィルターを使ってもうまくいかないように思う。


シンプソニクティス マルギナータス
7.5:水槽の丸洗いについて

どれだけケアしていても、水量の限られた水槽の中には次第に汚物が溜まってくる。これは上級種の場合は致命的になる。1ヶ月から2ヶ月に一度は水槽の丸洗いをした方がいいだろう。だが魚の移動を伴う水槽の丸洗いは、魚を死なせるリスクも高い。ベテランはおよそ次のようなやり方で全換水をする人が多い。まず水槽の澄んだ上部の水をバケツにホースで吸い取る。次に淀んだ水の溜まりやすい水槽の底を適当にホースで吸って、捨ててしまう。このときくれぐれも底のゴミを舞い上がらせないように!これで魚を死なせてしまうことは非常に多い。そして次に魚を網ですくう。これまた非常に注意しなければならないのが、網で魚を追い回したりしないことだ。このゴミの舞い上げは恐ろしく危険である!水槽に網を入れ、網で魚を追っかけたりせずに、そのままじっと静かにしておいて、魚が安心するのを待つ。そして油断した魚が網の前にやってきたときに、一瞬ですくいあげるのである。ベテランが塵一つ舞わせずに魚を静かに掬い取る光景はなかなか見ものである。こうやって魚を取り出したら、予め水槽の水を吸っておいたバケツに放り込み、ピート等の産卵床がある場合はそれを取り出して乾燥処理を行い(10章を参照)、それから水槽やフィルターを丸洗いする。丸洗いが完了すれば、魚を入れてある元の水をバケツごと水槽に戻し(ただし魚はまだ入れない)、ピート等の産卵床を再セットし、新しい水を加える。このときにピートが舞って水が濁ることもあるが、あまり気にする必要はない。また水温や塩分濃度が少々違うからと言って、あまり神経質になる必要はない。そして水が落ち着いてから魚を元に戻すのである。

なお水槽を洗うときに絶対に水道水は使わない。せっかくの良性バクテリアが全滅し、水槽が不安定になる。また水槽を洗うときに手にたっぷりと粗塩をつけて、それで壁面をごしごしやると、驚くほど効果的にコケやゴミを取り除くことが出来る(一度お試しあれ!)。こうやって手に粗塩をつけて、漬物をもみこむようなかんじで手洗いした水槽は、塩による適度の殺菌作用のせいか、驚くほど調子がよくなる。

7.6:底水は腐敗物の温床!

これまでくどい位底水の危険性については述べてきたが、もう一度ここでそれを強調しておきたい。うまく馴染んでくれている卵生メダカを死なせる原因の9割は、底水の汚染だ(これはアピスト等でも同様であろうが)。餌のやりすぎや残餌が、ただでも危険な底水の悪化を、さらに加速させることは言うまでもない。水槽の底水は、いわば道頓堀川のヘドロのようなものだ、くらいに思っておくべし!例えば、川の上流の澄んだ渓流に住んでいるアフィオセミオンの上級種を、こんなヘドロに接触させたら、一発でお陀仏である!
調子のよかった若魚や成魚が突然ベリースライダーになったり(ブアルナムやラコビーやフルミナンティス等にありがちである)、せっかく育成した若魚の腹に白いぶつぶつが出たり(ノソブランキウスやシノレビアスに多く、絶対に直らない)する原因の9割は、汚れた底水を水換えの時にかき回したせいだと思って間違いないと思う。これまた再三言うように、上級種になればなるほど、F2かF3くらいでは、まだまだ底水の汚染に極度に慎重にならなければならない。ただし底のゴミは、腐敗物の温床であると同時に、良性バクテリアの棲家でもある。特に貝の糞はいいバクテリアが繁殖するようで、あまり徹底的に取り除いてしまわないようにする。このあたりのバランス感覚が「飼育技術」と言われるものの大きな部分を占める。どんな熱帯魚の場合でもそうだろうが、底をどれだけ手際よく、ほどよく清潔に保てるかが、飼育繁殖の最大のポイントである。

なおアフィオセミオンやリヴルスの飛び出しは、底水の汚染に原因があることが多いように思う。水によく馴染んでいるアフィオは滅多に飛び出したりしないものだ。恐らく彼らは現地では、住んでいる水が何らかの原因で汚染されると、跳ねて別の水たまりに移動したりするのだろう。同様に水槽飼育においても、底水が汚れると、彼らはその水槽を嫌がって、そこから飛び出そうとするのだと考えられる(水の調子がよければ、少々驚いたくらいでは、彼らは別に飛び出しはしない)。以下に底水に関するチェックポイントを箇条書きにしておこう。

  1. 特に夏には底水に極度に慎重になること!冬場とは比べ物にならないくらい、底水の汚染で魚を落としてしまうケースが多い。上級種を、夏場は水温が25度以上になるような環境で飼育している人は、餌を大胆に減らし、まめに、慎重に、少しずつ、底水を換えるようにしてほしい。これが出来ないなら、クーラーで水温を20度近くに下げるとか、60センチ水槽にスポンジ・フィルターを二つつける等の贅沢な工夫をしない限り、アフィオの上級種(ディアプテロン、カメロネンセ、ブアルナム、セレスティ等)は絶対に飼えない。誇張ではなく「絶対に!」飼えない。
  2. 上級種ほど底水にはいやが上にも神経質に!一般種はF1になれば自分の家の魚と思っていいが、難種はまだまだ外から導入した魚と同じような扱いをしてやろう。
  3. 貝の動きに常に目配りすること!貝が水槽の底に落ち着いているときは安心していていいが、一匹も底にいる貝がいなかったり、あるいは底の貝がだらんとなって死にかけているときは、間違いなしに底の水が淀んでいる。
  4. 上部の水は澄んでいても、ピートや産卵床は腐敗の温床になりやすい。特に夏場は、アフィオなら繁殖は諦めて産卵床を取り除いてしまうとか、シノレビやノソならピートを交換せずにほったらかしにするといった工夫をしていい。
  5. 底の淀んだ水を数週間もためっぱなしにしてしまうと、処置のしようがなくなる。少し水換えをしただけでも、腐敗物が舞って、魚を死なせてしまうのである。底水はあくまでこまめに!が鉄則だ。
  6. 水換えはまず底水から!
  7. 底水を吸うときは極力静かに!
  8. 新しい水を加えるときも底の水が舞わないように!
  9. 魚をすくうなら、絶対に追い掛け回してはならない!網を静かに入れて、魚が落ち着くのを待ち、網の前に魚が来た瞬間に一瞬で魚をすくいあげる。
  10. 水換えをさぼって底水が淀んでいる場合は、ほんのわずかの底水の巻上げでも、魚が死んだりスライダーになったりする。
  11. 水換えを長い間さぼってしまった時ほど、加水は慎重に!底を巻き上げないのはもちろん、一度に元の水量に戻したりしない方がいい。例えば半分水を捨てたとしたら、毎日2センチ程度ずつ水を加えるくらいでもいい。これは特に上級種について言える。
  12. もしミスをして、長い間放りっ放しにしていた水槽の底水を巻き上げてしまったら、場合によっては、魚を一気に新鮮な水に移してしまった方がいい!例えば魚を移動させる時にへまをやって、追い掛け回して底水を舞い上がらせたとする。そんな場合は、これまた特に上級種であるなら、調子のいい種水をプラケにとって、そこへいきなり放り込むのである。あるいは水槽を傾けて、大きなバケツで受けながら、躊躇せずに全部の水をざーっと捨ててしまう。魚がぴょんぴょんと飛び跳ねるくらいに捨てるのである。中途半端に汚れが舞った水の中へ置いておくよりも、そんな水は全部捨てて、新しい種水を加える方がはるかによい。水質変化を怖がって、ゴミが舞っている水槽に中途半端に置いておくよりは、こちらの方が安全である。もしそれで魚が死んでしまったら、それは飼育者の責任だ。あきらめよう。もちろんいきなり古い水から新しい水に移動させるリスクは伴うし、「水質の急激な変化」リスクと「ヘドロの舞っている水の中に魚を置きっぱなしにしておく」リスクのどちらを回避するかは、飼育者の判断である。しかし、この状態になって魚を死なせたら、それは間違いなしに飼育者の責任だ。俗に「飼育テクニック」と言われるものは、餌やりの分量、水換えのタイミングと量、そして底水をかきまぜない技術、この三点に尽きると言っても過言ではない。
7.7:水質変化について少々

オーストロレビアス ドラズネンシス

周知のことかとも思うが、おおむね魚は「古い水から新しい水へ」、あるいは「硬度の高い水から低い水へ」移動する場合は、かなり水質が変化しても平気である。考えてみればこれは当たり前のことで、自然界でいきなり雨水が大量に降った場合、一気に水は新しくなり、硬度は急激に低くなるはずなのだ。こういう水質変化はむしろ魚にとって産卵刺激になったりすることが多いように思う。ただし、この逆は禁物である。「新しい水から古い水へ」、あるいは「軟水から高度の高い水へ」の移動は、きわめてリスクが高い。例えばROなどを使って人工的に硬度の低い水で飼育している人の魚をもらう場合、魚を死なせる確率が高い。逆に言えば、人工的に硬度を下げて飼育していると、自分の家ではそれでよくても、他人にあげる場合にショック死しやすい魚を育てていることになる。あるいは自分の家が古い水になっている時、自家繁殖している魚はもうそれに慣れているから元気だろうが、他人からもらった魚をそこへ無神経に導入したりしたら一発でショック死だ。そして、何度も言うが、「古い水から新しい水への移動はある程度大丈夫」とは言っても、程度問題だ。古い水でずっと育てられている魚くらい厄介なものはない。こうした魚をもらうときはいやが上にも慎重にする。

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