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著 岡田 暁生

12:留守中のケア

Nothobranchius korthausae

卵生メダカの飼育でしばしば問題になるのが留守中のケアである。まず成魚の場合、アフィオセミオンなら2週間程度(十分にスペースがあり水草が育っているなら4週間)の絶食には平気で耐える。むしろオスとメスの喧嘩のほうが怖いので、アフィオの場合、長期間留守にするときは、オスとメスをプラケに分けて、魚を落ち着かせるために水草を入れて、飛び出し防止のフタさせきっちりしておけば十分である。魚がベストコンディションなら、容器は3リットルくらいの小さなプラケでまったく問題はない。シノレビアスの仲間も、普段のケアが行き届いていればという条件つきだが、1週間から2週間くらいの絶食なら大丈夫である。オスとメスの喧嘩もそうひどくはない種類が多いので、飼育水槽でそのまま放っておけばいい。それに対してノソブランキウスは恐ろしく大食なので、長期間の留守による絶食は致命的である。特にファーザイのような難種の場合、1センチくらいから4センチくらいに急激に成長する期間には、与えるだけ餌を食べてしまうし、またガンガン餌をやって一気に大きくしないと、調子を崩すことも多い。ノソをやっていれば、5日以上の留守は出来ないくらいに思っておいた方がいいだろう。ただしノソは世代交代のペースが早いので、「卵さえ既に確保してあれば、親魚が落ちてしまっても大丈夫」くらいに思っておけばいいのではないだろうか。なお留守をする前には、やはり多めの水換えをしておく方がいい。

稚魚の場合は、親魚よりもはるかに問題が多く生じてくる。まずアフィオセミオンの稚魚は、成長が遅いぶん、留守中の絶食に対しては丈夫である。かなり大き目の水槽に、隙間もないくらいニテラやウィローモスといった水草を茂らせておけば、10日くらい留守をしても、何かしらの微生物を食べながらちゃんと生き延びてくれる。稚魚の数が少なく、水槽スペースが十分あれば(このことはどれだけ強調してもしすぎではないが)、1ヶ月でも大丈夫なこともある。戻ってきたときには驚くほど大きくなって色がついていたりすることもあるだろう。ただし、この「究極のほったらかし飼育」が可能になる目安は、1匹について3リットルくらいのスペースがあるときに限られるだろうが。

成長が早く大食の年魚の稚魚は、これに比べるとはるかに問題が多い。だがシノレビアスの稚魚は、一週間くらいまでの留守なら、何とか生き延びさせる手立てがないわけではない。ポイントは(アフィオの場合と同じく)「出来るだけ大きな水槽に、大量の水草を入れておく」ことに尽きる。「こんなに大きくて大丈夫かしら?」と思うくらい大きな水槽に入れておくことだ。また長期間の留守をする場合に重宝するのが、ミジンコである。留守の間に前もって水槽にミジンコを入れておくと、稚魚はミジンコの子供を食べて大きくなり、ある程度成長すると今度は親ミジンコを餌にしてくれるので、帰宅するといつの間にか稚魚が大きくなっていたということもある。大食のノソブランキウスについて

Fundulopanchax sjoestedti

は、留守をするなら確実にその種類の卵を確保しておくとか、あるいは留守が稚魚の期間に重ならないように孵化のタイミングをずらすくらいしか方法がない。ノソはたとえ絶食を耐えたとしても、幼魚の時に餌不足でいったんひねてしまった個体は、その後の成長産卵に支障をきたしてしまい、まともには育たない。年魚、特にノソブランキウスは、仕事で出張などが不定期に入りがちな職業の人には、かなり厳しい。ただしベテランになってくると、一年のうち出張が入りがちな時期/比較的自宅にいられることが多い時期をにらんだうえで、十分なケアが出来る期間を見計らって稚魚が孵化するように、保管している卵の温度をコントロールしたりしている人もあるようだ。

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