あるいは水が深すぎて入れない(そして網の取っ手が短すぎる!)。
いたる所に大きな草刈蛮刀を持った農民が居て,我々に大きな声で怒鳴りかける。あるいは
川の流れが速過ぎたり,水の中にあまりにも多くの木が有り,一度網を使うと破れてしまう
等々際限無く難問が続く。いずれにせよ,これらの問題が単なる卵目採集旅行を偉大な忘れ
がたい冒険にしてくれる。
非常に単純で長くてあまり興味が持てない作業は,苦労して採集した魚の毎日の水換えと三
日ごとの魚の排泄物取り出しである。積極的になれるのは捕まえた魚を観察する時間が有った
時だけである。各々のコンテナーには採集ロケーション番号が全て付けて有り,死魚で保存を
必要とする場合便利であった。
自宅に帰り,やらなければならない事は,魚をうまく仕分する事であり(出きるだけ早く必要数量
の水槽を準備する事),膨大な量の調査資料の整理(無論リストに従い),採集した魚の正確な目録
作りと残念ながら旅行中に死んだ魚の保存である。
今回の旅行で最終的に自宅に持ち帰った魚は百匹を越えた(飛行機の中で死んだのは一匹のみで
あった)。ほとんどの魚がノソブランキウスで(この種だけで十二種類くらい),後はAplocheilichthys
及びBarbusとCtenopomaであった。色々な出来事の中で最も印象的なのは
ノソブランキウスspec. aff. korthausae(黄色)の個体群をアフリカ大陸で発見したことである。
Kwachepa(ロケーション TZL 53/01)
N.spec.aff.korthausae Kwachepa TZL53/01
この卵目は今日に至るまでタンザニア沖のマフィア島にのみに存在するものと思われていた。
そのほか,ノソブランキュウスeggersi(ブルー)の新しい個体群を新しいロケーションで発見した。
幸い持ち込んだ卵目の殆んどが繁殖し,現在ではその子供が欧州,アメリカ,アジアの愛好家の水槽で泳いでいる。
今回の旅は感動的な物であったと結論付ける事が出来る。但し時々危険でも有った
(地域によってはライフルで武装した警官が乗ったバスに文字通り護衛された事がある。
これは我々が旅行を開始した最初の週に乗合自動車が武装攻撃を受けた為である)。
しかし我々は素晴らしい動物達を自由に見る機会も持てた。例えばガゼール,シマウマ,ヌー,ライオン,
チーター,ゾウ,キリン,イボイノシシとハゲタカ。更には私の好きな魚が住むビオトープまで見る事が出来,
又それらの知識を深める事も出来た。
それにも増して,香りや澄み切った空気,絶え間なく変化する景色の真価を知る事が出来,
素晴らしい満天の星を満喫し,目もさめるような綺麗な夜明けと限りなく広大な土地を見ると
如何に我々が小さく無意味なものか認識させられた。
(翻訳 KCJ会員 酒井道郎 氏)
(訳者注)。原文はイタリア語。筆者はAssociazione Italiana Killifish(AIK)会長。 写真も同氏が撮ったものです。 同氏より採集旅行記をKCJのHPへ掲載する事に快諾戴けた事を感謝します。