1995年 タンザニア採集記

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イアン・セイントハウス

翻訳 酒井道郎

パート2:ルフィジ川

現在までの所,ミクミ・ナショナル・パーク(国立自然動物園)経由でもモロゴロ/キサキ・ルートでもセロウス・ゲーム・リザーブ (動物保護区) に到達出来なかった。問題は三度目のトライをするべきかどうかと言う点であった。このルートは最初セロウスからの帰り道に計画したキビティ経由の道である。10年ほど前にルード・ワイルドカンプがこの道を通りその時は快適な舗装道路であった。しかし現在はほぼ消滅している様子!キビティに到着するのに2時間は掛かると思っていたが,着いたのは午後3時で有った。但し途中ムベジ川で車を止めた事は認めなければならない。

此処はN. rubripinnis N.luekeiの生息地でダール・エル・サラ−ムから南に50キロの所にある。N. rubripinnis を数ペアー採集。但しN. luekeiは一匹も採集せずにギブ・アップ。キビティに着いたら更に主幹道路に沿って南に向けて進み,N. eggersiのタイプ生息地,ルホイ川に行くのが最初の意図であった。キビティに着くのに時間が掛かりすぎたので,ルホイ川へ行く考えは捨て,一泊する予定であったルフィジ・リバー・キャンプに向かった。


TAN95/6 N. rubripinnisとN. luekei のタイプ生息地。

驚きを持ってキャンプのオーナーの歓迎を受けた。彼は此処に3年居るが,陸路で来た“観光客”は我々が初めてと言うことであった。通常のルートは軽飛行機で近くの滑走路に降りるとの話。我々は彼に旅行の目的を伝えた所,近くの水溜りは知っているが,魚は居ない,但し翌日その場所に案内するとの事であった。その夜は森の中のキャンバスで出来たテントの中で過ごした。自国でのキャンプは,この様な立派なものでは無い!我々は一人ずつ個室のテントをあてがわれ,ベッドと風呂が付いており温水も電気も有った。翌日,私のテントの周りやテントの上に有る木々に居る非常にうるさい猿の群の好意により眠れず,夜明け前に起き着替えをした。
約束どおりキャンプのオーナーは朝食後,数キロ離れたプールに連れて行ってくれ,水の中に入れ取り出した網の中身を見て驚いていた。

これらのプールには三種類のノソが居た。N. janpapi,N. melanospilusともう一種類,即ちこの魚が欲しさに此処へ来た,N.eggersiが居た。この個体群
は特別である。昔ルフィジ・リヴァー・
キャンプ近くで赤い個体が採集されたが,残念なことに雄が一匹だけ生き残った。これが同じ種類の他の個体群と掛け合わされ,それが現在“赤”とか間違って“ルフィジ・リバー・キャンプ”と称されている物の祖先である。
現在,我々が採集した魚から出ている純粋な系統は愛好家の間でN. eggaersi Red Rufiji River Camp TAN95/7として他とは区別されている。この系統を純粋に維持できる事を期待しよう!


ロケーション番号 TAN95/7 N. eggersi Red Rufiji River Campの生息地。

このロケーションで魚を捕食する蜘蛛を水面で多数居るのに気付き,偶々魚を探していたらその蜘蛛が一匹網に掛かった。この蜘蛛は都合が良い事に我々が写真を充分撮れる程網の中に滞在し,その後地面に大慌てで逃げた。地面でも立ち止まったのでもっと沢山写真
を撮る事が出来た。自国に持ち帰りスライドを現像したところ,蜘蛛が魚を地面に押さえ
つけている写真が現れた。魚の頭,特に目が蜘蛛の前に見えた。体は蜘蛛の下に隠れているのであろう。正確にどのように蜘蛛が魚を捕まえたか判らないが,網から逃げ出した時かと思われる。網の中で写真を撮っていた時は魚が蜘蛛の下に居なかった事は確信できる。犠牲になった魚は偶々N.janpapiであった。この魚は水面近くに住むので,このプールでは蜘蛛の餌になって居るのであろう。

このキャンプからの魚N. eggersi,の名前の前に“赤”(red)を付けた理由の一つは,他のプールを探していたら,水が一杯溜まった轍がありそこでもN.eggersiを見つけた。今回は,ロケーション番号7から2キロも離れて居ないのに,これらの魚は青であった!見る限りでは,この二つの個体群を隔てる障害物は無く,障害と言えばこの二つの個体群が個々の色に分かれて繁殖した事であろう。このもう一つの個体群はN. eggersi
Blue Rufiji River Camp TAN95/8と命名。


N.janpapiを捕食しているフィッシュ・イーティング・スパイダー(よく見ると蜘蛛の下にジャンパピが頭を出している)。


N.eggersi Blue Rufiji River Camp TAN 95/8

N.eggersi Blue Rufiji River Camp TAN 95/8の生息地。

それから我々は昼食を取りにキャンプに戻り,キャンプでキビティ村には比較的良いゲスト・ハウスが有ると聞いたのでその夜一泊する予定でキビティへの帰途に就いた。キャンプを出てから,大きな問題に遭遇した。どうやってキビティに帰れるであろう。キャンプへは暗闇の中を前の車に付いて来ただけだし,昼間は見る限り四方八方に交差した轍の跡がある何の変哲も無い埃っぽい潅木の続きである。唯一の方法は自分達が砂埃の中で付けた轍の跡を引き返すしかない。幸いな事に,雨が降らず昨夜の轍が残っていた!
ルフィジ・リバー・キャンプに行く途中,暗くなる前に,ノソ生息地として相応しく見える地域に気がついて居たので,帰途そこに止まってみた。思っていたとおり,そこにはN.melanospilusとN. janpapiが居た。帰ろうとしていた所,ルード・ワイルドカンプが突然我々を呼んだ。彼の網の中に我々の欲しい魚のリストの一番トップに有ったもう一種類のノソが居た!これは私が見たノソの中で一番大きい種類で有った。150ミリものサイズのN.ocellatusであった!同じサイズのものを6匹捕らえ,幸いな事に3ペアーが取れた。あまりにも大き過ぎて適当な袋が無かったが無事全て生き延びてくれた。大きなポリスチレンの箱をこの6匹に使用した。問題は何処から来たか判らない蛭が時々袋に現れる事であった。他にはメスの入った袋から夢精卵を取り除かなければならない問題があった。

帰途を急いだがキビティに到着したのはだいぶ暗くなってからであった。推薦されていたゲストハウスは満員で他のゲストハウスを探さなければならなかった。このゲストハウスの標準に関して話す事は殆ど無いが一泊一ドル(120円)でも高すぎると思われる代物であった。言うまでも無い事だが,翌朝は非常に早く起きた!


ロケーション番号 TAN95/9

キビティに止まる事に執着したのは,N. eggersiの生息地が有るからであった。このロケーションはリンディへの道をキビティから南へ20キロも行かない所に有った。この場所は見つけ易くルホイ川の架かる道側に有る。ここでは勿論何時でも何処でもお目に掛かったN. melanospilusは見つけたが,N. eggersiは雌しか見つけられなかった。魚はプールに戻し他のプールを探しに橋を渡り南の方向に進んだ。ルフィジ川の有るルホイから20キロあたりの所でダール・エス・サラ−ムに引き返すべく北に戻った。ルフィジ川から1キロ当たりの所で,あまり期待で出来そうも無い水溜りを見つけた,そこでN.melnospilusとN. janpapiを採集したが,N. eggarsiは居なかった。

ルホイ川に戻る迄,水は見なかったが川の南側で車をとめ,西へ100メートル程度の所でN.eggersiの雌雄が居る小さな水溜りを見つけた。これらを採集しN. eggersi Ruhoi River TAN95/11と名付けた。ここからダールへの帰途に就いたが,平穏無事で何も起こらなかった。再度ロケーションTAN95/6で止まり,N. rubripinnis を少々採集したが,N.luekeiは居なかった。北に向いダールのホテルに着いたが未だ昼間であった。この様なことが起こったのはこの旅行中これが初めてであった!


ロケーション番号 TAN95/11。 N. eggersi Ruhoi River生息地

ロケーション番号 TAN95/10