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ノソサファリ MT2003

著  フィリッペトーレ 氏(APK50)
翻訳 酒井道郎 氏(KCJ007,APK139)

2. ロケーション

次の朝、即ち4月6日の朝、妻が8時30分頃起こしてくれて、今日は良い日和であり、泊まっている部屋の ベランダの前にいくつかの水溜りが有ると教えてくれた。ベランダに出て、ノトブランキウスが町の真ん中に生息している なんて有り得るかと考えながら数分間水溜りを眺めていた。そこで兎に角空腹を覚えたので朝食に行った。食後に、 私が長靴を履く為と、網を取りに我々は部屋に戻った。ホテルから数十メートルしか離れていないのと、まだその段階ではこれらの 水溜りにノトブランキウスが実際に居るかどうか判らなかったので魚を入れる容器は何も持って行かなかった。最初の池に到着するや否や、 水の中に網を入れたら、蛙の卵が採集できた。何度か網を入れたが全然魚は採れず、蛙の卵だけであった。その時、 現地の子供達が近づいて来たので、これらの水溜りに小魚が居るか聞く事にした。彼らは、ここよりもう少し先に有る二つの水溜りに “バンデイリーニャ”(Bandeirinha=ポルトガル語の小旗=ラコビー)と呼ばれる小魚が存在すると、即座答えると同時に、 そこを教えて欲しいかと聞いてきた。私もすぐ同意し、その前に魚を入れる容器を取りにホテルに戻った。同時にGPSと 写真機及び寒暖計を探して来る事にした。

この辺一帯は色々な水溜りが有り、現地の子どもによれば、雨期の始めはそれらが一つに繋がっていると云う。 一人の子供によれば、雨が激しく降る時は溢れて小川が道を横切り(後で判った事だがチベベ川の枝わかれした小川で有った)、 そこには流れに引き込まれた何百と言う“バンデイリーニャ”が見られるとの話であった。更に、“バンデイリーニャ” と同じタイプでサイズが大きく赤色の他の魚は居ないかと聞いたが、居ないとの事(往々にしてノトブランキウス・クンタエを意味する赤系の ノトブランキウス・オルトノートゥスの事をはっきりと聞いたつもりだが・・・)。

魚を捕獲した水溜りはSofala(ソファラ)州の文化センターに通ずる砂の小道に沿って有った。もっと奥には“Casa de Bicos”(家禽の家)と言う表示が見えた。二本の木が水溜りに影を作っており、一部には直接太陽光線が当たっていた。ビオトープの深度は15cmから1m以上まで変化しており、それは現地の子供が完全に潜った時に確認出来た。水中花は色々な浮草で、ありふれたスイレンに非常に似ている数種類の赤い水草であった。草は群生で、ある地域はかなり密生しており、一部はほとんど1mの高さに達していた。

水は栗色をしており透明度は抜群で、土は砂と黒い粘土と分解した植物繊維の混ざったもので水溜りはかなり暗い様相を呈していた。 水の底には清涼飲料水の空き缶が見られた。子供の一人が網を貸してくれと云い、水溜りの底を探り出した。 数秒も経たない内にノトブランキウス・ラコビーの最初のオスが現れた。色は良く乗っていたが、かなり痩せて見かけは餌不足のようであった。 更に2匹のオスと6匹のメスが捕獲されたが、いずれも健康状態は良くなかった。同時に水温を測り、 写真を数枚撮り、経緯を測り、部屋で分析する為の水も採集した。種々の分析から、朝の10時半で、 PHは7、KHは5、亜硝酸塩の水準は<0.3mg/リッターで温度は25.1度, 外気温は27.9度であった。

採集した魚の内、2トリオが旅を生き延びた。このロケーションで採集した魚は個体群が“Beira(ベイラ)”で、 記号を“MT03/1”として“Beira、MT03/1”になった。

オスは少々の違いは有るものの基本的には色の配分がN.ラコビー“Beira 98”に似ている。 主な色は青とオレンジで体に赤の縦縞が付いている。主な色はブルーとオレンジで体には赤い縦線が入っている。 深いオレンジ色が出ていてそれを赤の縦帯がクロスしていて、私が見た中では一番きれいなラコビーであった。

N.ラコビー“ベイラ”MT 03/1 上:♂ 下:♀ バスコ・ゴメス 氏(APK03) 撮影