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著 岡田 暁生

5:導入時の問題

5.1:導入してすぐに落としてしまう原因

せっかく楽しみにしていた卵生メダカが到着したのに、一週間ほどで死んでしまうということが、特に初心者にはよく起こる。その場合の原因はまず次の三点に尽きると思っていい。

  1. 水あわせが急激すぎた(水あわせは必ず最低でも数日かけること!)。
  2. サラの水槽を使った(新品の水槽は見た目はきれいだが非常に不安定なもの、必ず空回しして、水が安定しているのを確認してから使う!)。
  3. 最初から餌を多くやりすぎた(卵生メダカはノソで3日くらい、アフィオとシノで1週間くらいの絶食なら、何の問題も起きない!)。

また、ようやく水に慣れてくれたと思って、2・3週間くらいたった時点で最初の水換えをした途端に、魚が頓死するということもある。マニュアル本には「1週間に一度三分の一の水換え」などと書いてあるが、成魚で購入した卵生メダカの場合、最初の1ヵ月半くらいは数日おきに少しずつ(二センチくらい)水を入れ替えるようにして、大量の水換えは避けるようにした方が賢明だ。ただしこれはあくまで成魚で購入した魚の場合の話であって、自分の家で育ったメダカは、いきなり温度あわせもせずに別の水にポチャンと放り込んでもびくともしない。

なお、どれだけ気を使って導入しても、ノソブランキウスの仲間の頓死だけは避けることが出来ない。万全のケアをしたにもかかわらず、ノソブランキウスが1週間で頓死したとしたら、あまり気にしないことだ。
「ノソはそういう魚」と思った方がいい。ノソブランキウスの成魚購入は、寿命の短いクワガタのワイルドものを購入するのに似ている。成魚はあくまで「種親」。たとえ10日で死んでしまったとしても、その間に産卵さえしてくれればこっちのもの。自分の家の水で卵をとった次の代からは、見違えるように丈夫な魚になってくれるだろう。

5.2:導入直後に調子が狂ったら?

アフィオセミオンとシノレビアスの仲間は、ノソブランキウスのような導入時の「理由のわからない頓死」は少ない。だが、導入して間もなく、何か水の色が悪くなって、魚が調子を崩すということもあるだろう。こうした時に中途半端に水を換えると、ますます魚が弱っていき、確実に数日後には死んでしまったりする。導入時は元気だった魚がヒレを閉じて何か景気の悪い顔をし始めたら、そして水の色も完璧に澄んでいるとは思えなかったら、大いにリスクは伴うが、次のような対策しかない。

  1. もうその魚はなかったものと思って、餌を一切やらずに、何もせず放置する。一週間くらいすると見違えるくらい水が澄んで、魚が元気になっていたりすることがよくある。
  2. 上のやり方とは正反対だが、状態のいい水草水槽などがあるなら、躊躇せずに、そのベストの水を入れた別の水槽に水あわせもせず放り込んでしまう。乱暴なようだが、水の急変を恐れて悪化した水でだらだら飼い続けるよりはるかに効果があることもある。だが、どちらの方法も100パーセントの保証はない。
5.3:最も慎重な導入法

一応の目安として、外から導入した魚の最も万全な導入法を書いておこう(それで
も保証の限りではないが)。3.3で述べた方法で3日くらいかけてプラケに足し水していけば、プラケの水量がそろそろ一杯になるだろう。4日目で導入予定の水槽に水ごと移動する。水深は1センチくらいになるはずだ。そして4日目以後は毎日1センチずつくらい足し水していく。餌は冷凍赤虫を毎日数本で十分。必ず残餌防止のためのラムズホーンをたっぷり入れておく。また喧嘩防止と水質浄化のためにマツモやウィローモスやリシアも十分に。
なお、臆病な魚だと餌を食べているのかいないのかわからないことがよくある。こんなときに水槽の中で生きていてくれるミジンコや黒ボウフラがあればとても重宝する。


ミジンコ

1週間から10日かけて毎日1センチの足し水をすれば、やっと水槽が一杯になる。アフィオやシノレビアスなら、導入して2週間目くらいして底水を2センチくらい抜いて足し水。水と魚の状態が万全で餌が少なければ、3週間くらい放っておいてもいいくらい。くれぐれも餌は少量にすること。導入して1ヶ月から2ヶ月は、この2センチほどの小換水を1週間から2週間に一度するだけで十分。餌は赤虫数本で十分。出来れば1週間に一度は絶食の日を作る。
大食漢のノソの場合、餌はやや多めで、ピンセットで一つまみくらい。毎日足し水していって水槽が一杯になったら、今度は毎日1センチ(あるいは数日置きに数センチ)の水の交換を行う。こうやれば相当な難種ノソでも1ヶ月から2ヶ月は生き延びさせることが不可能ではないし、その間に卵を生んでくれさえすればこっちのものである。別の言い方をすれば、ノソを成魚で導入する場合、この慎重な方式をとらない限り、まず間違いなしに1週間前後でだめにしてしまう。いや、この方式でやっても1ヶ月の間成魚を生かすことが出来て卵が取れれば十分であり、たとえ1ヶ月で親が死んでも、ノソはそういう魚だと思うことである。

いずれにせよ、初めて成魚で導入した卵生メダカの場合、マニュアル通りの「2週間に一度の水換え」などをいきなりしては絶対にいけない。慎重に水あわせをしたかいあって、魚が慣れてくれたように見えても、油断は禁物。導入から10日後くらいに、「もう大丈夫だろう」と、いきなり通常の三分の一くらいの水換えをやったりしたら、あっという間にお陀仏である!とにかく外から導入した卵生メダカの場合、「餌を徹底して控える」「急激な水換えは絶対にしない」「底水をかきまわさないように少しずつ」が鉄則だ。

なお、外から導入した魚を長持ちさせるには、出来るだけ大きな水槽で飼うに限る。 60センチ水槽でペア飼いなら、上のようなやり方でうまく導入しさえすれば、まずト ラブルが起きる心配はないとさえ言える。要するに30センチ水槽の小さなスペースで 綱渡りのような水質維持をしようとするから、何かと問題が起きてくるのである。ノ ソブランキウス・ファーザイのような最難種を外から導入しても、60センチ水槽に入 れれば、何とか3ヶ月飼い込むことが出来たという話も聞いた。

4.種水の用意 | 6.餌について