BKA(英国)とAPK(ポルトガル)の2005年コンベンションに出席して
文・写真 酒井道郎(KCJ007, BKA337:10, APK139)
(1)はじめに
2005年10月7日から20日まで英国とポルトガルを訪問し、BKA(英国卵生メダカ愛好会)とAPK(ポルトガル卵生メダカ愛好会)のコンベンションに出席しました。病み上がりゆえ、万が一を考え女房を同伴しました。1993年から1999年までロンドンに一緒に住み、ポルトガルにも数回行ってますので、メダカに興味の無い女房はコンベンションの間一人で買い物や見物に行くと思っていました。

準備中の展示棚
ところが会場がいずれも町から離れた場所で行われたので、結局コンベンション開催中は会場にカンズメ。英国では結構奥さん達も旦那について来ていました。彼女らは全くメダカには興味が無く、いつもラウンジに集まってお茶を飲んだり編物をしたりしながら絶えずダベっていました。女房もその仲間にはいり、あまり退屈せずにすごしたようです。彼女らの話を横で聞いていると、自分の旦那がいかにメダカオタクか、客観的且つ正確に、更に少々皮肉とユーモアーを混ぜながら話し合い、笑いの輪を作っていました。ポルトガルでは奥さんが来ている場合は、奥さんもメダカに興味を持っておられる方々で、女房はバーで専ら日本から持ち込んだ本や観光案内書を眺めていました。
会員も面白い所があって、階級社会がハッキリしている英国では、大学教授、科学者、建築家等々そうそうたる知識人と、クリカラモンモンの刺青だらけのブルーカラーが一緒になって会場の設営に当たっていました。ただ良く観察すると、指示を出しているのはホワイトカラーで、力仕事はブルーカラーが分担する傾向が見受けられました。ポルトガルも似ていましたが、こちらの方がより自然に皆が混ざり合っていました。いずれも趣味を同じくする楽しい仲間達でした。

準備中の展示棚
どちらの会も年に一度のお祭りで、多数の人が集まっていました。ポルトガルでは懇親会の夕食は家族連れで、子供がたくさん参加して賑やかでした。いずれも広々とした会場で2〜3日かけて夕食会も一緒にできるというのは羨ましい限りです。APKコンベンションには隣国のSEK(スペイン卵生メダカ愛好会)の連中が車で多数来ていました
彼らとは魚の名前はいつもメール上ラテン語でやり取りしていましたので、実際彼らが口で発音するのを聞くのは興味深いものでした。一番新鮮であったのは、rachovii(ラコウィー=日本ではラコビー)を英国では“ラコバイ”と発音し、ポルトガルでは“ラチョビィー”と発音する事でした。いずれも、英語とポルトガル語の発音そのままで、お国訛りがフルに出ています。日本人の“ラコビー”が、一番ラテン語の発音に近い感じ。惜しむらくは“v”はvaseline(ワセリン)やvirus(ウイールス)のように“ウ”と発音し、ラコウィーとするのが正解。ところで、彼らに“ラコビー”と言ったら通じるか?との疑問が生じますが立派に通じます。今回は両国ともすべてラテン語読みで通しましたが、クリカラモンモンのお兄さんの一部から、怪訝な顔をされた以外は全く問題有りませんでした。逆に、外人からラテン語の呼び名を習うのは危険だなと思いました。
(2)英国愛好会2005年コンベンション
1月7日朝成田を出発し、ロンドンで国内線に乗り換え同日の夕方に現地につきました。開催場所はマンチェスターからタクシーで40分ほどのハダーズフィールドと言う片田舎の大きなホテルで行われました。数年前からこの場所だそうです。地下に広いホールがあり、貸し切で使え、価格も都心に比べ格安だからだそうです。
次のようなスケジュールでした。- 10月7日
- 出品魚の持ち込み。
- 10月8日
-
- ワークショップ1(メダカ小屋の作り方)
- レクチャー1(Mr.Ruud Wildekamp)
- 会員持込みのメダカのオークション(一人12ぺアー迄)
- ワークショップ2(メダカ小屋の作り方)
- 定期総会 ・ 晩餐会と表彰式
- 10月9日
-
- レクチャー2(Mr.Ruud Wildekamp)
- 出品魚のオークション

「1995年タンザニア採集記」の著者
Lan Sainthouse氏
今回参加は初めてでしたので知り合いと言えば会誌・ホーム・ページに「1995年タンザニア採集旅行記」の翻訳を掲載させてもらったMr. Ian Sainthouse(イアン) と2002年に自宅を訪問してグリンダル・ワームを貰ってきたBKAのウエッブ・マスターでBKAのノソ部会長のMr. Julian Haffegee(ジュリアン)の二人のみ。幸いな事に、会場に到着したらイアン夫妻に会い、そこで彼が1995年に一緒にタンザニアへ採集旅行に行った、メダカの趣味の世界では採集歴と出版歴では超一流のMr.Ruud Wildekamp(ルゥード)を紹介され、以後会場を離れるまで、イアン夫婦とルゥードと一緒に時間を過ごしました。
- (A)出品魚の持ち込み
- 手荷物でペットボトルに入れて運んだ養日さん、村田さん、原田さんのメダカは無事でしたので、早速会場に持ち込み受け入れ担当の会員夫妻に手渡しました。丁度名古屋の倉知さんの出品魚を発泡スチロールの箱から出していましたが、残念なことに死着がみうけられました。箱はかなり以前に日本から届いたが、そのまま自宅に置いておいて、会場へ持ち込んでから開梱したのではないかと推測いたします。 多数の魚が一箇所に集まるので、特定のメダカだけ開梱して、餌を与え養生をさせるというのは不可能ではあります。海外コンペへの空送出品はタイミングが難しいと思いました。なるべく大きくて頑丈な個体を送るのが第一条件でしょう。尚兼子さんから戴いたアフィオの卵はBKAに寄付してきました。
BKAコンベンション 特別講師
Ruud Widekamp氏 - (B)ワークショップと会員持込みのメダカのオークション
- ワークショップは会員の一人が自分で広い庭にメダカ小屋を建てた経験から建築材料から断熱材の種類、ラックの作り方等々を指導していました。オークションの方は、会員がどんな種類のメダカを飼っているか知るいい機会でしたが、買う気も無かったし、旅の疲れもあり割愛しました。
- (C)レクチャー
-
会員持ち込み魚のオークション事前展示
BKAコンベンション会場
右手に各種メダカ関係書籍の販売所ルードさんは世界各国に採集旅行に出かけています。1950年から2003年までに誰がどこへ行きどのようなメダカを 採集しそのロケ番号は何かまで詳細に網羅したメダカの採集記録書“Wild Collection of Killifish 1950-2003”には彼の名前が17回と一番多く出ています。その彼がパソコンを駆使して、まだ誰も採集旅行に行ってないアフリカの各地域をスクリーンに映し出し、そこで発見されそうなメダカの名前を挙げたり、ここはまだ新種が発見される可能性ありと、二回に分けて話をし、会員を冒険と夢の世界へ誘い込んでくれました。
コンベンション会場 左手に展示棚が7〜8本現実にはBKAコンベンション直後、1950年代に発見され幻のノソと言われ、まだ趣味界には持ち込まれていないN.rubroreticulatusを求めて、彼はカナダのワッターズ博士とSKSのパコ・マルンブレス氏と一緒にチャドへ採集旅行に行っています。幸運な事に二種類のロケ違いを入手。ただし秘密の世界なのでしょうか、チャドへ行くとは一言も教えてくれませんでした。ポルトガルでSEKの連中から今度マルンブレス氏がチャドへN.rubroreticulatusを採集に行くとは聞きましたが・・・(写真はhttp://web.madritel.es/personales1/fcasado2/seccion%20nmg/index.htmご参照)。悲しい話は、彼がオランダに到着し、トランクを開けたところ保温箱が壊れており、せっかく採集したメダカがすべて死んでいた事です。でも、カナダとスペインでは目下産卵中で、暫くすれば趣味界にもばら撒かれると思います。
- (D)定期総会
- 役員2名欠席のもとに、26名が参加し、各担当役員から簡潔な説明があり、予算案が可決されました。興味を引いたのは下記二件。
- 財務担当:2005年度の収入は約180万円。その内会費収入は140万円。支出150万円。その内会誌印刷・発送料 140万円。 会費収入は全て会誌に使用されているが、BKAとしては会誌が会員を保つ一番の柱ゆえ、今後も経費節減に努めつつ、会誌を充実させたいとの説明が有りました。
- 会員名簿(登録)担当:昨年会員が420名から380名に減少。 理由は主に海外会員の減少による。海外会員は会誌の充実したDKGやAKAに流れる傾向にある。
(3)ポルトガル愛好会2005年コンベンション
APKのコンベンションは14日からでしたので、それまでロンドンに滞在。その間、養日さんから托送されたフランスのピレットさん用のリブルスも、APKコンペ出品用に託送されたBKAのセイントハウス氏のPronothobranchius kiyauensisもホテルの片隅に餌も無しで放置せざるを得ませんでした。ロンドンからリスボンまでは1時間ほどの空の旅で、空港にはモザンピークへラコビーとオーソノータスを採集に行き「2003年ノソ・サファリ」を書いたフィリッペ・トーレ夫妻が出迎え。会場はリスボンの中でしたが中心地より少々離れた広大な森の中にある展示専用の大きな建物の中で行われました。
APK登録会員は180名ほどいるが、会費を払っていない会員もいるので、実数100名ぐらいかと言う会長(大学教授)のいたっておおらかな話がありました。ラテン系のせいか、アバウトな所が至る所に見かけられるのがAPKです。会費を払っても領収書もこない、会誌もこないというのが当たり前で、目くじらを立てるほうが間違っているようです。
今回の大きな目的の一つは、APKに出席するフランスのピレットさんと知り合いになり、今後KCJに定期的な卵の供給依頼をすることでした。彼はアクアビッドの出品常連者でその誠実さがゆえに会員の中でもフアンがたくさん居られます。メダカの「求む・譲る」世界版の“Killitrader”に彼が自分の欲しいリブルス名を書いていましたので、養日さんから貰って手渡しました。非常に喜んでくれました。帰国後早速彼から卵のオファーが有り、購入された方も殆んどの方が満足されていると確信しています(海外から卵を引くのは宝くじを買うみたいなもので、卵が少しでも有れば「当たり!」と思うぐらいの遊び心がほしい物です)。彼はコンベンション中会場に隣接するバーに居座り、拡大鏡を使ってメダカの卵をピンセットで小分けして袋に入れ、一袋10ユーロで売ってました。 尚、高島さん、粟田さんその他の方から戴いた数々の卵はAPKに寄付してきました。 有難う御座いました。

会員持込魚のオークション
右手の青いシャツはMOZ 99シリーズを
採集した内の一人Peter Riley氏

コンペ出品魚のオークション
スクリーンにコンピューターで
落札価格明細表示
- 10月14日
- ・出品魚登録
- 15日
-
- ワークショップ(生餌とメダカの飼育法)
- ブラジル採集旅行報告(PKA会長)
- ウルグアイ・アルゼンチン採集旅行報告(ジョゼフ・フレンチ氏)
- 晩餐会と表彰式(於乗馬クラブ)
- 16日
- ・出品魚のオークション
(4)コンペ(BKA & APK)
水槽は、BKAは30cm程度サイズのガラス水槽、APKは同程度サイズのプラケを 使用してました。APKはそのかわり、全水槽に水草を投入。全ての終了後、APKはドンドン水を抜いてプラケを積み重ねておりかなり傷がついていました。でもそれが当たり前で誰も気にしないようでした。
日本から持ち込んだメダカは養日さんのEpiplatys fasciolatus zimiensis Faimah SL 89がBKAのクラス5.で三位入賞しました。
審査に先入観やえこひいきを避けるため、審査が終わるまでは各水槽に張られたラベルの出品者名がブランクで、審査終了後に名前の付いたラベルが改めて付け直されました。
出品魚のカテゴリー
- BKA:
クラス1.Aphanius及び他に所属しない“New World”のメダカ。
クラス2.南米年魚。
クラス3.リブルス。
クラス4.ノソ、フンドゥロソーマ及びプロノソ。
クラス5.エピプラ、アプロケイルゥス、ランプアイと他に属さない“Old World”のメダカ。
クラス6.Fundulopanchax, Radaella, 及びCallopanchax。
クラス7.Mesoaphyosemion(除くCallium グループ)。
クラス8.小型アフィオセミオン(クラス7.所属以外)Scriptphyosemion 及び Archiaphyosemion。
クラス9.ブリーダー(若魚三ペアー)底に卵を産むタイプ。
クラス10.ブリーダー(若魚三ペアー)上層に卵を産むタイプ。
- APK:
グループ1.大型アフィオ.(Callopanchax, Fundulopanchax,Raddaella)。
グループ2.小型アフィオT.(Aphyosemion s.s.,Mesoaphyosemion,Scriptaphyosemion, Archiaphyosemion,Episemion)。
グループ3.小型アフィオU.(Chromaphyosemion,Diapteron,Cathetys)。
グループ4.Epiplatys,Aphyoplatys,Aplocheilus及Pachypanchax。
グループ5.Rivulus及びkryptolebi。
グループ6.アフリカ年魚。
グループ7.南米年魚。
グループ8.その他。
グループ9.若魚―非年魚。
グループ10.年魚。
グループ11.写真。
- BKA:
出品件数
A. BKA:出品登録件数 177件 内死着23件。
B. APK:出品登録件数 207件 内死着 8件
これは海外からの出品はBKAのほうが多い事を示しています。出品資格
A.両会とも下記は禁止
あ)他人が孵化させたり飼育していたメダカ
い)生息地採集の原種メダカ
B.両会とも下記OK
あ)年魚・非年魚に関係なく卵から自分で育てたメダカ
い)二名の会員がメス・オスを一匹ずつ出してペアーにしたメダカ
コンペ審査員数
BKAは審査委員が6名。APKは各グループ毎に二名。いずれも、「李下に冠を正さず」で自分の出品魚が属するクラス・グループの審査からは除外。審査基準
A.BKA:持ち点は0〜10点。総合的に判断。ただし、0点は死着の場合のみ。10点はまず付けす、7点、8点、9点の三種類のみ。
B.APK:持ち点は0〜100点。
(一)色、(二)サイズ、(三)メス・オスのサイズ・バランス、及び(四)健康状態の四項目はいずれも0点〜20点。
(五)ひれの状態 0点〜17点。(六)難易度(キリーダータ2000記載による)0点〜3点。
KCJのコンペ出品基準は前回より決定されましたが、「卵から育てたメダカは年魚・非年魚関係なく出品可」と言う条件緩和は検討に値すると思います。オークション
両会とも、スクリーン上に魚の番号、写真等がコンピューターから映し出され、値段が上がってゆくに従い次々と表示されました。事前に魚を袋詰めにして置き、専門の受渡し担当者数名が袋を持って落札者の所に行き、現金と引き換えに手渡し。出だしの価格は両会とも400円(2ポンドと3ユーロ)ぐらいで、最高落札価格は7000円〜8000円ぐらいでした。